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ショートホラー24

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24)寝相

眠れない、うなされる、夜中にふと目が覚める。寝相が急に
悪くなった。女の子なら性夢を見ることが多くなった。
そんな症状があらわれたときには何かに取り憑かれていると
思ったほうがいいと友だちが言うんです。
お部屋の中に何かがいる。だけど引っ越したわけでもなく何
年も住んでいるのに、このところ急にそんな状態に悩まされ
ている。思い当たるフシがありません。
毎日がすっきりしない。会社に出ても同僚の子に心配されて
しまうほど。

それで今夜、学生の頃から仲がよかった彼女の家を訪ねて
相談した。

「ベッドから落ちるのよ。これで二度も。いままでそんなこ
となかったのにね」
「寝相は悪くない?」
「だと思うよ。子供だった頃は別に、いくら何でもベッドか
ら落ちるほどひどくはなかったつもりなんだ」
「悪夢とか?」
「どうなんだろね、朝起きて覚えてる夢は多くはない。だけ
どちょっとエッチな夢は多くなったか・・」

友だちは笑いますが、元気のない私の様子を見かねたようで、
妹に話してみようと言うのです。友だちの妹は私より3つ歳
下なんですが、姉である友だちに言わせるとそっちの能力が
あるらしい。子供の頃から妹といると怖くなると、よく話し
て聞かされました。
私たちは同期でいま二十八歳。二人とも独身です。彼女の妹
は二十五歳なんですがすでに結婚していて、そういう意味で
は私たちより大人なのかもしれません。
そんなことでその翌週の土曜日、二人で新居を訪ねたんです。

「特にないわよ。取り憑かれているとか肩に何かがのってる
とか、そういうことはないみたい。お部屋に何かいるとしか
思えないけど。すぐにでも行ってあげたいんだけど、生憎明
日から主人と旅行で三日ほどいないから」
そう言って彼女は小さなデジカメを貸してくれた。お部屋の
あちこちを撮って来いと言うのです。
「撮れるのこれで?」
「たぶん。私の念を込めてあるから写ると思うよ」
三日したら戻るから、そのとき写真を見せて、何かがいるよ
うなら考えましょうと言うのです。

だけど、まさか。信じていなかった私ですが、これなら写る
と断言されると怖くなって撮れません。
「ねえ撮ってよ、あたしムリ、できないもん」
友だちは笑いますが、写真なんか撮ってもし何かが写るよう
なら、もうあの部屋にはいられない。友だちは笑いながら了
解してくれ、その日の夜一晩を私の部屋で過ごしてくれた。
友だちの妹から直接電話があったのは四日後のことでした。
そのときは妹のほうが姉の部屋を訪ねていて、そこへ私が呼
ばれたんです。友だちもその妹も私の顔を見るなり、眉をあ
げて微妙な面色。

妹が苦笑しながら言いました。
「最悪だわよ」
「え・・」
そしてまず、私が横たわっているベッドを友だちが撮った写
真をテーブルに置いたのですが・・私は恐怖に突き落とされ
てしまいます。
「ね、ベッドから無数の手がのびてるでしょ。これみんな男
の手よ。それからこっちの写真」
それはドレッサーに向かう私を斜め後ろから友だちが撮った
もの。
「鏡の中にいくつもの目が浮かんでる。お部屋に無数の男た
ちの霊がいるってことね。夜な夜な男たちの霊に嬲られてる
からもがくのよ。だけどどうして急にってことよね。思い当
たるところがないとすれば・・」
私は息を詰めて彼女の目を見つめます。
「たまたまよ」
「たまたま? 偶然てこと?」

さらにもう一枚の写真。それは無人の浴室を写したものでし
たが、狭い四方の壁からにょきにょきと黒い影のような男た
ちの手が突き出していて、虚空をつかむように蠢いているの
です。
妹は言いました。
「下手に何かをしないほうがいいでしょうね。霊道というも
のがあって、それは霊の通り道なんですけど、突然開くこと
もあれば、ちょっとしたことで道筋が変わってしまうことが
あるものなのよ。それがたまたまお部屋を通過した。若い女
がいるってことで男たちの霊だけが居座ってしまったの」
「怖いよ・・どうすればいい?」
「あながち怖いとは言えないものよ。霊はどれも悪霊ではな
いし逆に悪霊をはらってくれることにもなる。引っ越したり
してもついて来るし、下手に逆らって怒らせるとよけいに災
いするからね。ほっとけばそのうちいなくなるって。もしか
して模様替えとかしなかった?」

それには心当たりがありました。前の彼と別れたときにベッ
ドを新しいものと交換した。そのときドレッサーなんかも置
き場所を変えていたんです。
たったそれだけのことで霊道が開いたのか道筋が変わったの
か。言われてみれば模様替えをしてからお部屋がおかしくな
った気がします。

その週末、土日を使ってお部屋を大きく変えてみた。綺麗に
しているつもりでも家具の裏側には綿ゴミが積もっている。
汚した部屋には悪いものが集まるって言いますしね。すっき
りしたお部屋に暮らすようになり、それから徐々に異変は起
きなくなっていったのでしたが・・。

しばらくした朝のこと。ごくかすかな何かの香りに目を開け
ると、枕元にピンクのコスモスの花が一輪、そっと横たえて
あったんです。
「ふふふ・・もう・・」
秋らしくなってきたと、私は窓を開けて風を入れた。

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